受け取りました

 

え?はいはいわかりますよ、考えてます。

でも正直、将来どうなりたいのかと聞かれても「わ…っかりませんねえ…」としか言えないですねえ。

将来のこと、どんな職業につくのか、結婚出産の選択をするかしないか、どこにどう住むのか、なんて知らねーよ、未来から来た人でもあるまいし。 おっと、いえいえ、わ…っかりませんねえ…

 

「将来をきちんと考えろ」と言う人は、そういう風に考えてきて、それで成功した(と思っている)ために私にもそうしろとアドバイスをくれますでしょう。しかし私が同じように将来のことをきちんと考えて行動した結果、成功できるのか?わからないですね。

 

あと、「きちんと」ってどこまでか?「将来」とはどの程度先の話なのか?なんたる曖昧さでしょうか、このアドバイス。あ、その尺度は自分で考えろと。ハイ、すみませんでした。

 

人のアドバイスって、どこまで受け入れていいか悩みますよね。本当に自分の欠点を言ってくれているのか、アドバイスをしたいだけなのか、その時虫の居所が悪かったのか。こんなこと、声に出して言えませんよー。だって、じゃあ自分でやれよ、と突き放されてしまうでしょう。大人になって怒られるってありがたいことですものね。だから一応話は全て取り込んでおきます。しかしそのあととても悩むのです。どこを残して、どこを切り捨てるべきか。

 

人は、自分の範囲内でしかアウトプットができないでしょう。だから教育、って恐ろしいなと常々思いますし、子どもを育てるということのグロテスクさにおびえます。自分が教えていること、間違っているか正しいかなんてわからないのに、正しいと言う。正しいとはなんですか?

 

私って、色々なものからできているんですよね。家族、友達、会社の人、観た映画、読んだ本、聴いた音楽、インターネット、数多の他人。影響の大小はありますけれどね。私って何なんでしょう。私が完全に一人で生み出したものって何もないじゃないですか。亡霊みたいですよね、あるのにない。

 

ああとりあえず、アドバイスありがとうございます。とても消化しきれませんから、一旦しまっておきます。こうしておけばしまったことも忘れませんし、内容もバッチリです。そしていつか、はたと思った時に引っ張り出してみます。それが、私にとって最も丁度良い時なのですから。

 

昼寝

 

芝生色のソファに寝転がりながら本をめくる。

 

脚を伸ばすとベッドの木枠につま先が届く。

 

縁をなぞる。一本一本の指で質感を確かめる。

 

のを自分の目で見据える。

 

視線を移す。クローゼット、姿見鏡、吊るされた洗濯物、冷蔵庫、ピクサーのオープニングと瓜二つな電球、そして右斜め後ろには窓。

 

車が走る音がする。

いくつもの車輪が道路を転がり、遠ざかっていく。

 

泥のように?昇華するように?

 

いや、車輪に引っ張られるように。

意識は車に乗って、私の体から離れていく。

 

 

f:id:memaume:20200504151255j:image

 

 

映画を二度観る

f:id:memaume:20190323231529j:image

 

気狂いピエロ」って「キチガイピエロ」と読むんだってさ!

 

何の予備知識もなしにゴダールの映画を二本見た。

とてもじゃないけれど消化しきれなくて、鑑賞後はストーリーを頭の中でなぞりながら帰宅した。

 

大興奮で眠れなくなるほどでもなく、さっぱり忘れてしまうほどでもなく、彼の映画は私の中になりを潜めた。私は眠りにつき、朝を迎えて仕事をした。

 

その日の夕食は職場の人たちと取ることになっていた。飲み食いをし、賑やかに時は流れついにお開きとなった。

 

駅に向かって皆が歩いた。ひとりの上司と私は並んで歩いた。彼は私に休日の過ごし方を尋ねた。明日も掃除と洗濯をするの?たまにはどこかに出かけたりしないの?

 

その予定です。でも、昨日、映画を見ました。

 

へえ、何を見たの?

 

知らないと思います、昔のフランス映画で…

 

フランス…ゴダールとか?

 

瞬間、起きてから一度も思い起こさなかった昨日の映像が一気に脳内を駆け巡った。パラパラ漫画のように音を立てて、写真のように鮮やかであった。

とても衝撃だった。彼がゴダールを知っていることが、その驚きが私の記憶の起爆装置となったことが。

そして他者のアプローチを必要とする私の回想方法に少し虚しさを覚えた。

 

f:id:memaume:20190323234315j:image

 

また見つかった!

何が?

永遠が

太陽と共に去った海が

 

 

 

 

日記帳がない

日記帳を忘れた。旅行先にこそ持っていくべきものなのに。

リンスボトルにシャンプーが入っていた。となるとシャンプーボトルにはリンスが入っていると思い、勢いよくプッシュした。シャンプーが出てきた。

 

他人が料理をしている姿はとても魅力的である。間近で見れば見るほど、近しい人であればあるほど眩しい。自炊をしない自分を重ねて虚しくなる。この気持ちは、映像は、今覚えていてもいざ食事をしようとするときはすっかり忘れてしまうのである。

 

身近な人の無様な姿を見るのが苦手だ。失望してしまうからだ。

髪がキシキシしている。旅行の初日の夜が一番幸せだ。